【月刊】2025年8月・尊厳死をめぐる世界の動向

8月も世界各国で尊厳死をめぐる様々な動きがありました。法制度の議論から、個人の選択の実態までいくつかの国のニュースをご紹介します。

  1. 韓国
    延命医療の中断を事前に誓約した国民が300万人を突破
    原文: Over 3 Million South Koreans Pre-Pledge to Forgo Life-Sustaining Treatment.
    URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/e99799aa3c7ae508c3fa2cc5a9cdabca22fcf75c
  2. ニュージーランド
    幇助死の年間実施件数が前年比で37%急増し、制度のあり方に議論
    原文: New Zealand Sees 37% Surge in Assisted Dying Deaths in One Year, Sparking Debate.
    ソースURL: https://righttolife.org.uk/news/new-zealand-37-surge-in-euthanasia-and-assisted-suicide-deaths-in-one-year
  3. カナダ
    安楽死先進国カナダ 医師による幇助日常化 「死」の自己決定神聖視
    原文 :Canada Is Killing Itself. The country gave its citizens the right to die. Doctors are struggling to keep up with demand.
    URL:https://www.chugainippoh.co.jp/article/news/20250822-008.html
  4. ウルグアイ
     「尊厳死法案」が下院で可決され、上院での審議へ。南米での合法化の動きが加速
    原文: Uruguay’s Lower House Approves “Dignified Death” Bill, Moves to Senate for Debate.
    ソースURL:https://www.vaticannews.va/en/church/news/2025-08/bishops-of-uruguay-respond-to-preliminary-bill-approving-euthana.html
  5. コロンビア
    非末期患者や未成年者への安楽死適用拡大が、生命倫理の観点から議論を呼ぶ
    原文: Colombia’s Broad MAiD Criteria, Including Non-Terminal Patients, Sparks International Pro-Life Caution.
    ソースURL:https://spuc.org.uk/colombias-medical-assistance-in-dying-a-cautionary-tale-for-pro%E2%80%91life-advocates/

【感想】
コロンビアは南米で尊厳死が認められている国です。同じ南米ウルグアイにも広がっています。韓国の事前意志の誓約300万人は同じアジア圏として興味深いですね。仏教や儒学といった近い感覚を持つお隣、韓国が通った道は日本にとっても学ぶことが多いはずです。こう並べると、文化、地域問わず世界的な流れがあるように感じます。一方でカナダとニュージーランドの事例は議論を呼びます。カナダは5%が安楽死で亡くなるそうです。しかし、その影で支援不足や経済格差が尊厳死を選ばせているのでは、との懸念もあります。尊厳死が選択肢以上になっているとしたら…。またコロンビアの例はすべりやすい坂が実際に起こったように感じます。
尊厳死や安楽死に対して慎重な意見を改めて思いまします。

『コーヘン氏は、「安楽死の制度化には、社会に四つの条件が揃っていなければいけない」と主張し、だれもが公平に高度な治療が受けられる医療・福祉制度②腐敗がなく信頼度の高い医療③個人主義の徹底④教育の普及――をあげる。このうち一つが欠けても「合法化は危険」という。』1

『「死にたくなって当然だ」「死なせてあげても構わない、むしろその方がその人のためだ」という価値判断が共有されている社会のなかで、同じような状態であっても「生きたい」と思う人に圧力がかかることはない、その人が生きづらくなることはない、などと言えるだろうか。2

本に記載されていた一文。重要だとわかっていたはずでも、今月のニュースを見た後では言葉の重みを感じます。

このブログではどこかの国の制度を「正解」とするの事はありません。この複雑な世界は人の感情、生活、文化を表します。そこから「尊厳ある生と死」とは何かを問い続けていきたいと思います。


  1. 引用:三井美奈、安楽死のできる国 ↩︎
  2. 引用:安藤泰至、尊厳死を語る前に知っておきたいこと ↩︎

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です